若年性一側上肢筋萎縮症(平山病)
はじめに
今から三十数年前(1959 年) に、筋萎縮性側索硬化症などの難治性神経疾患に関する研究を進めているうちに、それとは違う特異な症例が存在することに気づきました。
その特徴は
@若年の男性が多く罹病すること、
A筋萎縮・脱力が一側の上肢に限局し、他へ進展しないこと、
Bこれらが早期には進行するが、やがて停止性になる(しかしこの間に症状が進んで手指の運動障害を残す)ことなどです。
この筋萎縮症は若年性一側上肢筋萎縮症(平山病)として知られるようになり、当初はわが国での報告が主でしたが、最近では諸外国からも同様な病気の患者の報告がみられています。
特異な症状
この病気の特徴は以下の通りです。
@10代から20代前半の若年男子に多く発病します。
A手指の力が弱くなり多くは一側の上肢が侵されますが、ときに両側のこともあります。手と前腕の筋萎縮が主な症状です。このため握力が低下し、指が伸ばしにくくなり、箸の使用、書字、ボタンはめなどに支障を来たします。
B寒冷時に手がかじかみやすくなります。
C指を伸ばした時に細かい不規則な震えが認められます。
D発病後数年間は症状が進行しますが、 その後自然に停止します。従って生命予後は良好です。しかし、 手指の運動は支障を来し、重症な場合には手指の機能はほとんど廃用状態となり、日常生活はかなり制限されます。
病気の原因・治療 最近の画像診断技術の進歩によりその病態がかなりわかってきました。脊髄造影検査を行いますと、首を前に曲げた時に脊髄を包んでいる管(硬膜管)が前方につぶれます(健常人にはみられません)。
このため脊髄が前後方向に圧迫されます。このような首の前屈が長時間に及んだり、何度も繰り返されますと、脊髄の中にある手の運動を司る神経細胞がダメージを受け、その結果筋力が低下し筋肉がやせてくると考えられます。
この病気の治療方針は、発病後の早期に長時間首を前に曲げることを禁ずることにあります。これに基づき私達は、長時間に亘り首を前屈する姿勢で作業(勉強や楽器演奏を行なうときは、頸椎カラ−を着用するように指導して来ました。この治療により進行は阻止され一部には症状の改善が得られています。
早期発見の重要性
この病気は将来の進路を選択する時期の青年男子を主として侵します。放置すれば手指の運動機能の障害が進みますが、早期診断・早期治療により、症状の進行停止や改善が期待できるようになった今日、病気の早期発見は極めて大きな意義をもちます。中学や高校で行われている学校保健(健診)によるチェック(視診、握力測定)の他に各自が注意することにより早期に発見されることの重要性がここにあります。
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